国産備長炭と外国産備長炭、現場で感じる違いと選び方の判断基準
「外国産の備長炭でも十分なのか、それとも国産でないと困ることがあるのか」。炭を扱う飲食店の方から、こうしたご相談をいただくことが少なくありません。
価格だけを見れば、外国産備長炭は国産の半額以下で手に入ることもあります。コスト管理が厳しい飲食店経営において、その差は決して小さくないでしょう。一方で、「安い炭に変えたら料理の仕上がりが変わってしまった」という声も耳にします。
私たちナガサワは明治5年から150年以上、国産炭だけを扱ってきました。その立場から言えば、国産備長炭には確かに外国産にはない特性があります。ただし、すべての飲食店に国産が必要かというと、そうとも言い切れません。大切なのは、違いを正しく理解したうえで、自店の業態や調理スタイルに合った炭を選ぶことではないでしょうか。
この記事では、国産備長炭と外国産備長炭の違いを、私たちが現場で見聞きしてきた実感をもとにお伝えします。
火持ちの違いは営業時間の長さで実感する
国産備長炭と外国産備長炭の違いとして、最もよく挙げられるのが火持ちの差です。
国産の紀州備長炭や土佐備長炭は、高温でじっくりと焼成されることで炭素の密度が高くなり、比重が重くなります。手に取ったときのずっしりとした重さ、叩いたときの金属的な高い音は、この密度の高さを示すもの。密度が高いほど燃焼がゆっくり進むため、結果として火持ちが良くなるのです。
一方、外国産備長炭は産地や製法によってばらつきがありますが、全体的に国産より軽いものが多い傾向にあります。同じ重量で比較すると、燃焼時間に1.5倍から2倍ほどの差が出ることも珍しくありません。
この差が顕著に表れるのは、長時間営業のお店です。ランチからディナーまで通しで営業する焼き鳥店や、回転率の高い焼肉店では、途中で炭を継ぎ足す回数が変わってきます。火持ちの良い炭であれば、営業中の炭の管理に手を取られる時間が減り、調理に集中できるという声をいただくことがあります。
ただし、ランチタイムだけ、あるいはディナーの数時間だけという営業形態であれば、火持ちの差が大きな問題にならないケースもあるでしょう。
火力の安定性と立ち上がりの違い
火力の面でも、国産と外国産では特性が異なります。
国産備長炭は着火に時間がかかる反面、一度火がつくと安定した火力を長時間維持できます。温度のムラが少なく、焼き台全体で均一な火力を保ちやすいのが特徴です。うなぎの蒲焼きのように、一定の火力で時間をかけて焼き上げる料理には、この安定性が欠かせないと感じています。
外国産備長炭は、国産に比べて火の立ち上がりが早いものが多く、営業開始までの準備時間を短縮できるという利点があります。ただし、火力の持続性では国産に及ばないことが多く、時間の経過とともに火力が落ちやすい傾向があります。
お客様から「外国産に変えたら、後半の焼き加減が安定しなくなった」というご相談をいただいたことがあります。話を聞くと、営業開始直後は問題ないものの、2時間、3時間と経つにつれて火力が弱まり、同じ時間で焼いても仕上がりが変わってしまうとのことでした。火持ちと火力の安定性は、表裏一体の関係にあるのです。
爆ぜやすさはお客様の安全にも関わる
備長炭を扱ううえで避けて通れないのが、爆ぜ(はぜ)の問題です。炭が急激に加熱されたとき、内部の水分や空気が膨張して破裂する現象で、火の粉が飛び散ることがあります。
国産備長炭も爆ぜがまったくないわけではありませんが、品質の安定した窯元のものであれば、爆ぜのリスクは比較的低く抑えられています。窯出し後の乾燥や選別が丁寧に行われていること、原木の状態が安定していることが、その理由として挙げられるでしょう。
外国産備長炭は、製品によって爆ぜやすさに大きな差があります。品質の良いものは国産と遜色ないこともありますが、ロットによるばらつきが大きいという声をよく聞きます。カウンター越しにお客様の目の前で焼く業態では、爆ぜによる火の粉が料理やお客様に飛ぶリスクを考慮する必要があるかもしれません。
私たちが仕入れの際に見ているポイントのひとつに、炭の断面の状態があります。断面がきめ細かく、ひび割れが少ないものは、内部構造が均一で爆ぜにくい傾向にあります。外国産でも断面の美しいものはありますが、国産のほうが全体的に安定している印象です。
灰の量と質の違い
営業後の片付けで意外と差が出るのが、灰の量と質です。
国産備長炭は燃焼効率が高いため、燃え残りや灰の量が少なくなります。灰の質も細かくサラサラとしていて、処理がしやすいのが特徴。翌日の営業準備にかかる時間を短縮できるという実務的なメリットがあります。
外国産備長炭は、灰の量が多くなる傾向があり、また燃え残りが出やすいものもあります。焼き台の下に溜まる灰の量が増えれば、掃除の手間も増えますし、灰の処理コストも考慮に入れる必要があるでしょう。
地味な違いに思えるかもしれませんが、毎日の積み重ねで考えると、スタッフの負担軽減や営業時間の効率化につながる部分です。
外国産備長炭で十分なケース
ここまで国産備長炭の特性を中心にお伝えしてきましたが、外国産備長炭が適している場面もあります。
たとえば、イベントや屋外でのバーベキューなど、一時的な使用であれば、火持ちや火力の安定性よりもコストを優先するのは合理的な判断です。また、炭火を補助的に使う業態、つまりメインの熱源がガスや電気で、仕上げや香りづけとして炭を使う程度であれば、外国産でも十分に役割を果たせることが多いでしょう。
回転率が低く、一日の炭の使用量が限られているお店でも、火持ちの差が経営に大きく影響しないケースがあります。個人経営の小さな居酒屋で、夜の数時間だけ炭火焼きを提供するといった形態であれば、外国産備長炭のコストメリットを活かせる可能性があります。
大切なのは、自店の営業スタイルと炭に求める役割を明確にすることではないでしょうか。
国産備長炭でないと困るケース
一方で、国産備長炭を選ぶべき場面も明確にあります。
高級店や専門店として、料理の質で勝負しているお店。うなぎ専門店、高級焼き鳥店、炭火焼きをうたう和食店などでは、炭の質が料理の仕上がりに直結します。火力の安定性、香りの上品さ、そして「国産備長炭使用」という付加価値も含めて、国産を選ぶ理由があるはずです。
長時間営業で炭の消費量が多いお店も、結果的に国産のほうがコストパフォーマンスが良くなることがあります。単価は高くても、火持ちの良さで使用量が減れば、トータルでは差が縮まるからです。
また、カウンター商売でお客様の目の前で焼くスタイルでは、爆ぜの少なさや灰の美しさも重要な要素になります。焼き手の所作も含めて演出の一部と考えれば、炭の品質は妥協しにくい部分かもしれません。
実際に試して判断することの大切さ
国産と外国産、それぞれの特性をお伝えしてきましたが、最終的な判断は実際に使ってみないと分からない部分があります。同じ国産備長炭でも、紀州と土佐では微妙に特性が異なりますし、外国産でも産地や窯元によって品質は様々です。
私たちがお客様にお勧めしているのは、まず少量から試してみるということ。いきなり大量に仕入れるのではなく、実際の営業で使ってみて、火持ちや火力、灰の状態、そして何より料理の仕上がりを確かめていただきたいのです。
炭は消耗品ですから、コストは当然気になります。ただ、安さだけで選んで料理の質が落ちれば、お客様の満足度に影響します。逆に、必要以上に高価な炭を使っても、その差がお客様に伝わらなければ意味がありません。
自店の業態、調理スタイル、お客様層に合った炭を見つけること。それが結果的に、コストと品質のバランスが取れた選択につながると考えています。炭選びで迷われることがあれば、お気軽にご相談ください。業態に合わせたご提案ができればと思います。
